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鉄筋防錆工法

 コンクリート中の鉄筋が露出する要因は、数多く存在します。主に鉄筋の発錆による体積膨張でコンクリートが剥落し露出するというケースが多いのですが、鉄筋の錆汁がひび割れを通してコンクリート表面に現れている場合などもよく見受けられます。
 
橋脚に発生した、ひび割れに伴う錆汁
 このような状況では、コンクリートを鉄筋の健全な部分まではつり取り、断面修復等(充填)を行う前に、鉄筋の防錆処理を施さなければなりません。
 
 鉄筋の防錆処理にあたっては、適切な鉄筋防錆材料と、工法の選択が重要でしょう。
 
 鉄筋防錆材料
 
 現在、鉄筋の防錆材料は下記の種類に分類されます。
 
 ①錆転換型防錆材料・・・リン酸系、有機酸系、キレート剤等
 
 ②樹脂系防錆材料・・・エポキシ樹脂塗料、アクリル樹脂塗料等
 
 ③ポリマーセメント系防錆材料・・・SBR系・PAE系等のポリマーセメントペースト
 
 鉄筋防錆材料の内容は、以下の様になります。
 
 ①錆転換型防錆材料
 
 この種の防錆材料は、リン酸系や有機酸系のものですが、単独に使用される場合はコンクリート自体や、セメント系の断面修復材料への副作用などが心配されています。
 
 ②樹脂系防錆材料
 
 エポキシ樹脂塗料(プライマー系を含む)が、多く使用されています。硬化が早く、付着性や作業性も良いとされていますが、防錆効果は必ずしも良好とはいえない様です。硬化剤の種類による問題や通電性の異なる材料であるため、鉄筋の腐食が促進されるという説もあります。現在、変性エポキシ樹脂等が開発されています、,十分なデータはまだ出ていない様です。
 
 ③ポリマーセメント系防錆材料
 
 混和されるポリマーは、SBR系・PAE系が多いのが現状です。SBR系は防水性、中性化に対する抵抗性に優れ、PAE系は初期接着性、施工性に優れていますが、長期接着性はSBR系の方が大きいとされています。他に酢酸ビニル系については、加水分解等により酢酸が生成され、鉄筋腐食を逆に促進するおそれがあるとされていて、使用には注意をが必要でしょう。
 
 鉄筋防錆材料の性能は、NSK(日本建築仕上材工業会)規格に適合したものを選択するのが望ましいですが、試験法はJCI((社)日本コンクリート工学協会)における「付着強さおよび防錆試験方法」を採用するのがいいでしょう。
 
 以上鉄筋防錆材料については、主に上記のものが使用されています。最近では変性エポキシ樹脂系のものも開発されています。これは、エポキシ樹脂と錆転換型塗料との、複合的な防錆材料ですが、これらの材料の特徴は、錆層に深く浸透し、錆を強固に固着化させ、赤錆を黒錆に転換し、高分子キレート剤により非結晶質錆質を形成することによって錆を安定化し、新しい錆発生の抑制作用を働かせるものです。また、エポキシ樹脂が外部腐食物質の侵入を防ぎ、付着性を向上させるというような性能を有しています。
 
 鉄筋防錆工法
 
 鉄筋が露出しているということは、コンクリートが破壊されているということであり、鉄筋防錆工法による処理が必要であると言えます。その部分が露出したままで、長く放置されている場合、破壊面及び鉄筋に塩分、炭酸化物、付着阻害物等が付着しており、それらを除去するには、ブラスト処理が最適でしょう。同時にコンクリートを健全な部分まではつり取り,鉄筋の錆の除去を鉄筋の裏側まで行わなければ本来の鉄筋防錆の意味はありません。小規模なものは、ワイヤブラシ程度でもよいとされていますが、これでは不完全です。また、エアブラシやディスクグラインダー等も、鉄筋を余分に削りとることが多く、鉄筋の形状を変えたり、従来の径を減少させるおそれがあります。錆の除去はあくまで、ニアホワイトメタルまでのブラスト処理を行うことを標準とするのが最良の方法です。
 
 ブラストの機器は大型のものが多いですが、現在ではポータブルな小型バキュームブラストの機器も輸入され、現場でのブラスト処理が比較的容易になってきています。鉄筋防錆工法は、コンクリート断面修復の前段階の処理と考えられていますが、鉄筋コンクリート修復の根幹となる部分ですから、可能な限り完成時の性能を再現しなければならないでしょう。また、床版等コンクリートのかぶりの浅いものが剥離して、鉄筋が露出している場合は、断面修復は非常に困難であるといえます。この場合は、露出した鉄筋にそのまま防錆処理を施さなければならず、材料についてもよく考慮しなければならないでしょう。
 
道路橋床版の鉄筋防錆材塗布状況。鉄筋の裏側まで、丁寧に防錆材が塗られている
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