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コールドジョイント

コールドジョイントは 設計段階で考慮する打継ぎ目とは異なり、コンクリートの打継ぎ時間の間隔を過ぎて打設した場合に、前に打ち込まれたコンクリートの上に後から重ねて打ち込まれたコンクリートが一体化しない状態となって、打ち継いだ部分に不連続な面が生じることをいいます。この面のコンクリートは脆弱であり、ひび割れが生じていることが多く、構造物の耐力、耐久性、水密性を著しく低下させる原因となります。

コンクリート構造物の壁面に発生したコールドジョイント

発生要因

 コールドジョイントの発生は、図-1に示すように、前に打ち込まれたコンクリートの硬化程度(凝結程度)が最大の発生要因であり、この硬化程度は、コンクリートの配(調)合、環境温度等の自然条件、養生方法、コンクリートの練混ぜから打込み終了までの製造および運搬、打込みおよび締固め等の施工方法の影響を受けます。

図-1 コールドジョイントの発生要因

構造物に及ぼす影響

(1) 強度に及ぼす影響
 
 コールドジョイントが構造物の安全性に及ぼす影響について、既往の研究では凝結時間の曲げ強度に及ぼす影響を検討しています。その結果によれば、ASTM C403でコンクリートの振動限界として、定義されている凝結始発(プロククー貫人抵抗値:500psi)に達する時間よりも、早い時間で強度の低下が現れるとされています。コンクリート打設においてコールドジョイントが発生するのは、一般にプロクタ一貫人抵抗値で80~150psiであるとされています。
 
 また、コンクリートの硬化程度に影響を及ぼす要因として、環境温度、養生方法が有りますが、それらの関係は図-2、図-3を参照して下さい。コールドジョイント部のコンクリート強度は環境温度が高いほど、養生方法ではコールドジョイント部への水分の供給が少ないほど、健全なコンクリート部と比較して強度の低下が大きくなります。
図-2 環境温度と曲げ強度の関係
図-2 養生方法と曲げ強度の関係
 (2) 耐久性に及ぼす影響
 
 コールドジョイントが構造物の耐久性および水密性に及ぼす影響について、既往の研究によれば中性化への影響について図-4、図-5のように示されています。また、水密性への影響については、図-6のように示されています。中性化への影響については、コールドジョイントが生じた場合には図-4に示すように、通常のコンクリート表面からの中性化の進行とは別に、コールドジョイント部からの中性化の進行が構造物の内部まで生じ、十分なかぶりを確保していたとしても中性化を防止することができず、構造物中の鋼材腐食を早期に引き起こし構造物の耐久性を低下させることになります。また、図-5に示すように、コールドジョイントが生じないよう先に打込まれたコンクリートと後から打込んだコンクリートが一体となるよう、十分な締固めを行えば打継ぎ不良個所の中性化抵抗性を高めることが出来ます。
図-4 中性化概念図
図-5 打継時間間隔と中性化深さ
 水密性に及ぼす影響として図-6に示すように、特に初期材齢においてはコールドジョイントの発生によって著しく水密性が低下することがわかります。

図-6 水密性への影響

 また、コールドジョイントが発生した場合には、中性化や水密性の他にコンクリート構造物の耐久性を低下させる要因があり、それらは塩害や化学的浸食です。これらは、図-4に示した中性化と同様、コールドジョイントの発生によって有害物のコンクリート内部への浸透を容易にし、構造物中の鋼材の腐食やコンクリートの劣化を促進してしまうことになります。
 
 (3) 鉄筋コンクリート部材への影響
 
 鉄筋コンクリート試験体の、打重ね部(コールドジョイントを模擬した施工法)の評価を行った実験結果によれば、以下のようになるとされています。
 
 ① 打重ね部を有する鉄筋コンクリートの耐力は、低下の原因となるコンクリートの引張強度を鉄筋が補うことにより、一体打ちの鉄筋コンクリートと同等の耐力を保持することが出来るが、打重ね部が梁のせん断スパン中央部に有る場合には、打重ね部において「ずれ」が発生し、耐力の低下を招く恐れが有る。
 
 ② 打重ね部を有する鉄筋コンクリートの変形性状は、打重ね部のコンクリートの引張強度が低く、ひび割れが誘発されやすいため、一体打ちの鉄筋コンクリートと比較して同一荷重での変形が大きくなる。
 
 補修方法
 
 コールドジョイント発生後の補修対策は、主に2つに区分されます。軽微なコールドジョイント(色違いはあるが緑切れははっきりと認められないもの)は、図-7示すように、ポリマーセメントペーストをはけ塗りし対処するのが一般的です。
 
 ひどいコールドジョイント(緑切れしているもの)、特に外壁面に生じている場合は、図-8に示すように、Uカット工法などひびわれの補修に準じて行うのがいいでしょう。
図-7 軽微なコールドジョイントの場合
図-8 重度なコールドジョイントの場合
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