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無収縮グラウト材

近年、機械設備類、土木・建築構造物の多様化に伴って、各種グラウト工法を用いた特殊工事が多くなっているようです。特に、基礎となる構造物等の一体化、構造物の接合部分、例えば機械・橋梁などのアンカープレートの固定、支承部分の複雑な間隙を充填し、複雑な上部構造物からの荷重を基礎部に均一に伝達することを目的に開発された材料です。現在では、現場での材料管理を含めた品質管理の簡便化を目的に、膨張材を基材とした無収縮材である混和材に、十分吟味され、乾燥させた細骨材とセメントを予め混合したプレミックスタイプが広範に普及しています。
 
無収縮グラウト材の特徴は、
 
・優れた流動性(流動性に優れ、小さな間隙にも充填可能)
 
・無収縮性(所定のコンシステンシーの範囲内で練り混ぜたグラウトは、材料分離やブリーディングがなく、充填後の沈下・収縮もなく、安定した無収縮性を示す)
 
・優れた強度特性(初期及び長期強度とも安定した高強度が得られ、安定した膨張力により、高い付着せん断強度が得られる)
 
が挙げられます。 特にプレミックスタイプは、吟味されたモルタル材料が予め混合されているため、モルタル混練時に水を加えるだけでグラウト材が得られるという簡便さがあります。
 
用途は、橋梁支承据付け用グラウト、各種プラント据付け・各種機械設備類据付け用グラウト、鉄骨柱・鉄塔等の据付け用グラウト、逆打ち・逆巻きグラウト、耐震補強用グラウト、その他土木・建築工事における各種充填グラウトなどが挙げられます。
 
注意事項としては、「無収縮グラウト材」の謂われは、表面に出る部分が少ない小さな間隙に充填されるモルタルであり、充填後には乾燥を受けないことで、安定した無収縮性を示すところにありますが、セメントや無収縮材の硬化材として練混ぜ水を用いているため、乾燥を受けると当然乾燥収縮ひずみを生じるので、表面に出る部分は、完全な「無収縮性」を示さないことになります。したがって、表面が露出する部分は、濡れむしろ、養生マットなどで覆い、グラウト表面からの水分が蒸発しないように湿潤養生を行い、硬化脱型後も、塗布型養生剤を塗布する等、乾燥を防止する必要があることはいうまでもありません。
 
また、試験練り時や施工ボリュームが少ない場合には、ハンドミキサを用いて練り混ぜるケースがありますが、ミキサの攪拌羽根としてアルミニウム製のものを使用すると、アルミニウム製の攪拌羽根が練混ぜ時に細骨材などで削られ、アルミニウム粉末として発泡し、強度低下の原因となることがあり、ミキサの攪拌羽根は鋼製のものを使用し、アルミニウム製のものは避けなければなりません。
 
(a)「フイルコンR」
 
フイルコンRは、使用時に水だけを加えるプレミックスタイプと、細骨材と水を加えるセメントタイプの2種類があります。 特徴は、
 
①優れた流動性、②無収縮性、③優れた強度特性などが挙げられています。 標準配合は、表1に示す2種類があります。
 

表-1 フィルコンRの標準配合

流動性及び圧縮強度に関する試験例を図1、2に示します。

図-1 コンシステンシー試験結果例

図-2 圧縮強度試験結果例

用途は、橋梁沓・サイロ・煙突の据付用グラウト、機械・プラント基礎のグラウト用、鉄骨・鉄塔の据付用、逆打ち・逆巻きのグラウト用、土木・建設工事等の一般補修用が挙げられています。
 
注意事項としては、「片側から注入し、流出側からモルタルがあふれでるまで連続に注すること。」、「表面が露出している部分は、グラウト表面の水分の蒸発を防止し、気温が低い場合は、保温・加温養生をすること。」などを挙げています。
 
(b)「ユーロックス」
 
ユーロツクスは、使用時に水だけを加えるプレミックスタイプと、セメント、細骨材と水を加える混和材タイプの2種類があり、プレミックスタイプは、一般タイプの他、速硬型「プレユーロックススーパー」と低発熱型「プレユーロツクスM」があります。 特徴は、①優れた流動性、②無収縮性、③優れた強度特性などが挙げられ、混和材タイプと一般プレミックスタイプの標準配合は、表2に示すとおりです。

表-2 ユーロックスの標準配合

表-3 プレユーロックススーパーの可使時間例

表-4 プレユーロックスMの物性例

用途は、土木工事(橋梁支承据付、PC橋梁シースグラウト、コンクリート欠損部ジャンカ豆板補修、各種充填工事)、機械据付(各種プラント据付アンカー部分、クレーン架台・走行レール据付、各種機械類の据付固定)、建築工事(逆打ちコンクリート充填部分、後打ち耐震壁充填部分、鉄骨アンカー固定、ジャンカ豆板補修、配管工事等のにおける穴埋め)、その他(海洋構造物の海底アンカー固定、原子力発電所遮蔽壁、鉄塔中詰め、合成鋼管)などが挙げられています。
 
注意事項として、「練混ぜ用ミキサとしてアルミ製羽根のついたものは使用しないで下さい。」と記述し、アルミ製羽根使用による材料強度低下の原因を挙げています。
 
(c)「デンカタスコン」
デンカタスコンは、カルシウムサルフォアルミネート系膨張材の安定した膨張特性を活かし、グラウト材の「かなめ」です。 ①流動性、②無収縮性、③強度特性、④作業性、⑤経済性の5つの条件を満たすセメント系グラウト材です。
 
デンカタスコンは、使用時に水だけを加えるプレミックスタイプと、細骨材と水を加えるセメントタイプ、セメント、細骨材と水を加える混和材タイプの3種類があり、一般タイプの他、マスモルタル高温用として水和熱抑制タイプと緊急寒冷用として速硬タイプの3用途のものがあります。表5に適用区分を示します。

表-5 タスコンの適用区分

デンカタスコンは、カルシウムサルフォアルミネート系膨張材を基材としているため、安定した膨張特性が得られ、図3に示すように、高い付着せん断強度が得られます。

図-3 付着剪断強度(一例)

用途は、橋梁沓グラウト、重機械・プラント基礎グラウト、逆打ち・逆巻きグラウト、鉄骨・鉄塔ベースグラウト、原子炉遮蔽グラウト、鉄道道床グラウトなどが挙げられます。
 
(d)「マスターフロー870グラウト」
 
マスターフロー870グラウトは、各種グラウト工法分野のうち、主として土木・建築構造物及び機械類の据付け工事に用いられる金属骨材を含まない無収縮グラウト材で、静荷重はもとより動荷重を十分支持して基礎部に均一に伝達させることができます。使用時に水だけを加えるプレミックスタイプがあり、特徴は、①優れた流動性、②無収縮性、③優れた強度特性、④耐久性が挙げられています。仕様は、表6に示すとおりです。

表-6 マスターフロー870グラウトの仕様

表-7 マスターフロー870グラウトの物性例

用途は、鋼製支承・鋼製脚・ストッパー等の据付け工事、塔基部・スプレーサドル・アンカーレイジ等の据付け工事、各種一般機械類の据付け工事、各種クレーン軌道等の据付け工事、鉄骨柱・鋼製煙突等の据付け工事、柱・梁等の鋼板巻立て工事、各種アンカーボルトの固定などが挙げられています。
 
(e)「MG-10M」「MG-15M」
 
MG-10M(速硬性)、MG-15M(汎用)は、使用時に水だけを加えるプレミックスタイプで、標準配合は、表8に示すとおりです。

表-8 MG-10M、MG-15Mの標準配合

用途は、各種機械類の据付け用グラウト、橋梁支承据付け用グラウト、鋼板補強用充填グラウト、耐震補強用鋼板巻きグラウト、PC版・RC版等の接合部及び裏込めグラウト、アンカー固定用グラウトが挙げられています。
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