土木・建築構造物の総合メンテナンス −株式会社 月形−      −確かな技術で資産をガードする− ■土木・建築構造物の総合メンテナンス
断面修復(吹付け)工法
左官工法
吹付工法
プレパックド工法
 
 
 吹付け工法の概要と歴史
 
 吹付け工法とは、コンクリートやモルタルを圧縮空気によって吹付け施工する方法のことをいいます。
 
 吹付け工法は、吹付け機械を用いて施工する点で左官仕上げ工法プレパックド工法とは大きく異なります。吹付け機械は、吹付け材を搬送するポンプ、圧縮空気によって吹付け材を噴出するノズル、大量の圧縮空気を送るコンプレッサ、それぞれを接続するエアーホースから構成されます。セメント系材料の吹付け工法は、圧送空気を利用する点で塗装工事等に使用されるエアスプレーに似ていますが、吹付け材が塗料のように液体ではなく、液体・固体・気体の混合体であることが最も異なる点であるといえます。
 
 日本では、コンクリート構造物の断面修復工法としての吹付け工法の歴史は浅く、施工実績も少ないのですが、土木構造物の法面保護工法やトンネルの一次覆工としての吹付け工法の実績は多く、一般化されています。一方、ヨーロッパでは、コンクリート構造物の断面修復工法としての吹付け工法の実績は多く、コンクリートの劣化部をウォータージェット工法で除去した後に吹付け工法を用いて断面修復するという一連の補修方法が一般化されています。
 
 コンクリート構造物の断面修復工法としての吹付け工法は、混練したコンクリートやモルタルに急結剤、ポリマーデイスパージョン、短繊維等を加え、吹付け機械を用いて圧縮空気で対象構造物に吹き付ける工法です。その歴史は、吹付け機械の誕生に始まりますが、1915年頃、ヨーロッパ及びアメリカで、鉱山や水路等の土木工事に用いられたのが最初で、第一次世界大戦中に損傷を受けた構造物や鉄道トンネルの補修を目的として多用されていたようです。当時は、セメントモルタルが対象であり、粗骨材の入ったコンクリートの吹付け機械は、1965年以降に開発されています。
 
 吹付け工法の長所と短所
 
  吹付け工法には、以下の長所があります。
 
 @振動・締固め作業が不要
 A必要な型枠数が少ない
 B型枠にかかる側圧が小さい
 C広い範囲に薄く施工可能
 D斜面や上面に型枠を設置しないで施工可能
 E複雑な形状の製造に対応可能
 F搬送に使用するポンプの負荷が小さい
 G型枠工等の軽減で施工時間が短縮される
 
 その反面、吹付け工法には、以下ような短所があります。
 
 @施工精度が機械操作者の能力に左右される
 A急結剤等の特殊な混和剤が必要になる
 B配合条件(水セメント比等)が限定される
 C硬化性状(強度・耐久性等)が変動しやすい
 D吹付け機械の能力に施工が左右される
 E鉄筋背後が未充填になる危険性がある
 F跳ね返った材料の処理が必要になる
 G吹付け後に連行空気を混入させるのが困難
 
 吹付け工法の種別(乾式・湿式)
 
 吹付け工法には、乾式吹付け工法と湿式吹付け工法の2種類に大別されます。乾式吹付け工法は、水を加えずに混練したコンクリートやモルタルに粉末状の急結剤を加え、吹付け機械のノズル部に圧送して、ノズル部で水を加える方式です。また、湿式吹付け工法は、水を加えて混練したコンクリートやモルタルにポリマーデイスパージョンを加えてノズル部に圧送する方式です。
 
 乾式の最大の欠点は、ノズル部で水を加えるためノズル担当者の操作によって品質が変動しやすい点があります。一方、湿式の場合で問題になるのは、機械のポンプ圧送能力です。粉粒体と液体をそれぞれ別系統で搬送する方法を採用した乾式の圧送能力(水平:150〜200m、鉛直:100〜150m)と比較すると、湿式の吹付けでは練り上がった吹付け材をポンプ圧送するため、吹付け材の流動性や粘性によって、ポンプの負荷や吹付け材の性状変化が左右されやすく、湿式の圧送能力(水平:100m、鉛直:30〜50m)は乾式に比べて低いということになります。
 
 コンクリート構造物の補修・補強工事には、ポリマーデイスパージョン、短繊維あるいは収縮低減剤などを使用し、湿式では急結剤は使用しないことが多いようです。これは鋼、ガラス、ビニロンなどの短繊維は、鉄筋や溶接金網の代わりに吹付け層の靭性を高める機能を持つだけでなく、吹き付け時のだれ防止やひび割れの分散性に寄与している、ということになります。
 
 吹付け工法の品質・施工管理規準
 
 コンクリート構造物の断面修復工法としては、乾式においては超速硬セメントモルタルを主材料としており、品質管理は圧縮強度・付着強度を主体として行われています。湿式においては、ポリマーセメントモルタルを主材料としており、品質規格の試験項目としてはフロー値・圧縮強度・曲げ強度・引張強度・静弾性係数・付着強度が試行されています。このように、乾式および湿式は、いずれも材料がプレミックスされておりメーカーによる品質管理に頼らざるを得ない点、現場では施工性に合せて標準配合水量を人的に調節しており均一な品質が確保できているか不明である点や、ノズル担当者の技量によって仕上がり状態が異なる点等が特質として挙げられ、これらの特質を品質管理に反映考慮する必要があるでしょう。
 
 吹付け材の配合は、単位セメント量で300〜400kg/m3(モルタル:400〜600kg/m3)程度、粗骨材の最大寸法は、吹付け時の跳ね返りに配慮して10〜15mm程度以下としている事例が多いようです。
 
 コンクリート構造物の断面修復工法として吹付け工法を採用する場合には、施工実績が少ないため、品質管理および施工管理において準拠する規準がまだまだ整備途上にあるようです。
 
 参考までに、ヨーロッパでは、吹付け工法に特有の施工性に関する試験を規定している事例もあり、ドイツやオーストリアでは、ノズル担当者の技能認定制度を定めているようです。
 
 吹付け工法に関する今後の研究展望
 
 吹付け工法においては、吹付け材料、吹付け機械、ノズル担当者の技能および環境条件等が複雑に寄与するため、その研究内容としては、実験的事実による定性的評価が多く、理論的かつ定量的な研究例は少ないようです。しかし、最近では、各種解析手法を用いることでリバウンドを定量的に評価する研究やニューラルネットワークを用いた品質管理手法に関する研究事例も増えています。
 
 断面修復に吹付け工法が使用される対象構造物としては、橋梁では、床版下面、橋脚・橋台等が挙げられます。これらの部材は、交通量の多い高速道路では常時数Hzの振動、鉄道高架橋では列車進行時の衝撃荷重や振動等にさらされます。また、劣化したコンクリートを除去した後の凹凸面や鉄筋背面に吹付け材料を密実に一体化させることも要求されます。このように、吹付け工法に要求される性能は、交通振動下で十分な付着強度が確保できること、既存構造物に近い力学的性能を付与できること、さらには、耐久性向上に寄与することなどが主体であると考えられています。これらの要求性能を満足させる方向でヨーロッパでは吹付け工法の品質規格が確立されています。日本においても、産・学・官が一体となって、吹付け工法に関する研究が現在実施されており、性能評価試験方法の早期確立が望まれています。
 
 
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